2012年10月2日火曜日

60年の眠りから覚めて



 10月になり、台風が次々とやってきますが、過ぎ去る毎に秋が色濃くなるのを感じます。この夏より工房の催事のご案内の封筒を全く新しくデザインしてリニューアルすることになりました。すでに案内状をご希望のお客様には秋の展示会のご案内として新封筒が届いている方もいると思います。デザインは某大手化粧品会社で広告のアートディレクションを長く手がけてられるデザイナーさんにお願いしました。



 ずいぶんと久しぶりに封筒も模様替えしまして、今年の工房のリニューアルに因みインビテーション用の封筒も生まれ変わったのです。
 デザインを決めるに当たり改装中に古い昔の資料が沢山出て来て、長いこと見なかった、かつての図案や原案も多く見る機会があり父の手による彩色された図案を再び目にすることになりました。

 戦後すぐに染色の仕事に復帰した頃の父の描いた図案は若々しい力に溢れている物ばかりで伸びやかな筆致は当時30代だった父の勢いを感じさせる図案ばかりです。
 封筒のリニューアルに協力をお願いしたデザイナーさんの提案もあり先代の描いた図柄をどこかにあしらってみたら意義があるのではとの考えに、私も同意して数ある昔の図案から選んでみました。
 丁度、夏の事で黒々と力強く墨で描かれた撫子の柄を見つけ、勇気をもらったような図柄に心惹かれてこの絵の一部を封筒の片隅に金箔のレリーフとしてあしらうことしました。
  
 そんなわけでこれから当分の間、お客様へのご案内はこの新封筒が出番となります。おそらく昭和20年代後半に描かれた原案と思われますので、はや半世紀も前の柄を甦らせたことに父の力をもらい、背中を押してくれる気がして私も初心に戻り、まだまだ頑張らねばとの思いを強くする平成24年の秋となりました。

 台風が次々と来る度に被害が必ずあるのは切ないことですが、実りの秋を迎えて大分体も楽になり、着物を着るチャンスもこれから多くなりますので、新しい柄の創作に励んで行こうと思い10月に突入したという思いに満たされています。