2013年7月19日金曜日

200年前の「夏の小袖」



 先日お客様から、かなり古い200年は経ている夏の小袖を預かることになりました。預けられたお客様は出身が鹿児島の旧家の方で、とても長いこと箪笥の奧に保存されていた夏の小袖を、取り出したがどうしたものかとのご相談でした。
 何でも島津藩のお屋敷に当時、行儀見習いに上がった方、つまり持ち主の何代か前のお祖母様の物だったと伺っております。
 ゆうに200年は経っているはずとのことです。持ち主が今70代後半ですからよく今まで綺麗に保管されていたと感じました。


 この小袖は盛夏のもので柔らかな風合いがありましたが素材は麻です。 藍色一色で御所時模様が描かれている涼しげな小袖です。
 この小袖は盛夏用ですから帷子(かたびら)と呼ばれていたものと思われます。夏の帷子には「細染」または「地白」とがあるようです。確かに地は生成りとはいえ、白地のようです。
 柄の御所解模様は昔から描かれている普遍的な模様ですが、柄は型染めのように見えます。
 お袖が長くて若い人が着用していたのでしょう。お局での部屋着として、おはしょりをせずにこのまま引きずって着ていたと思われます。



 当初は私のところで提案している「今昔の会」の一環として古い着物を見直して現代に甦らせるという事で相談されたのですが、果たしてこの当時の小袖を今の形に直しても着る意志のある方が、周りにいられるのかはちょっと考えられません。
 素材といい柄といい、現代の形の夏の着物に作り替えるのも可能ですが、これほど古い小袖はあまりなく、貴重なのでこのままの形で後世の方の参考になるようにも思うので保存しておいた方が良いかと解くのには少しためらいます。

 着物の歴史としてこのまま保管するのが望ましいかと思案しています。写真に収めたのでこのブログ内でお見せ致しますので、着物を愛して止まない方のご感想も聞きたいと思っています。 この季節に相応しい古の夏の小袖のお話でした。