2016年11月8日火曜日

「瑠璃の会」秋晴れに集う



 来る11月5日は早稲田にあるリーガロイヤルホテル東京で「瑠璃の会」が催されました。
 この度も沢山の方々がお集まりになり、盛会の内に終えることが出来ました。この会ほど世代の違う人々が一同にあつまるという会はなかなかないのではと思います。




 これもひとえに着物を着て集まるというお約束の下での会ならではと言う華やかさがあります。今回は津軽三味線とオーボエそして日本の歌というコンサートでしたが、今までにない企画で、懐かしく親しみやすい音楽に包まれて、穏やかな雰囲気の中、歌に聴き入りました。


  お食事中には親しくお話を交わしたり、着物談義やらそれぞれの近況を語り合ったりして秋の午後を楽しく過ごしました。
 どの方も年齢に関係なくお洒落して着物姿でいられると何て華やぐことでしょう。これも着物効果と思えるのです。


 昨今は着物で多くの方が集まる会はバブル期に比べるとずいぶんと減っていますが、その点、瑠璃の会は時代の波にも消されないで、こつこつとよく続いていると思うのです。
 これほど世代の異なる方々が集まるパーティもめずらしいのです。それはいつも皆様自身の意志で集まって下さるので、こんなに長く続いているのだと主催者としては自負しています。


 まだ次回の会も決まらないのに次の案内の申し込みが来ているのは嬉しい限りで励まされます。
 着物っていいなと思って下さる方が居る限り、続けなくてはと思い着物はあるけれど着て行くところが無いなんて言われないようにがんばらなくてはなりません。
 皆様のご協力をこれからもお願いします。

2016年10月14日金曜日

新作・秋のあらた会 + 大島紬展



 一昨日は見事な秋晴れのなか、私立の明星学園中学2年生の授業の一環で、私の仕事、着物についての講演会がありました。

 今の中学生は大きいですね。この世代が着物についてどの程度の認識があるかと考えつつ、着物の持つ文化,強いては日本の工芸や季節感、日本の風土に育まれた美意識などなど、のお話をさせて頂きました。
 おわかり頂けたかしらと、ひとつでも心に残る言葉を覚えていてくれたらいいなーと思っています。

 本日よりあらた工房ではこの秋工房で染めた新作着物に加え、大島紬の特別展を開催致します。


大島紬の産地織元からコレクションした泥大島、白大島、古代染、泥藍などを展示いたします。工房の染帯新作と紬を併せた上質なお洒落をご覧頂ければ幸いです。
また、すでに大島紬をお持ちの方、どんな帯が紬に合うのかとお考えの方はぜひ参考にして下さい。


2016年9月5日月曜日

単衣の時の伊達襟について



 猛暑の夏が過ぎ、9月になればさすがに朝夕は吹く風も秋らしく感じます。
9月に入ったとたんに,さて何を着よう。夏を引きずるのは良くないし、9月らしく装うのはどんな着物がいいだろうかと、お出かけが決まっている方は少し悩むこともあります。
 早速に質問が飛んできました。9月の結婚式に相応しい単衣の訪問着があるのだけれど、伊達襟をつけるのはどうなのかしらという悩みです。
 元々伊達襟というのは、本来重ねで着る着物を省略して伊達に襟だけを残した物が一人歩きしたのですから、それを考えればこの季節に上が単衣の着物であれば下の比翼も単衣であるべきなのです。それで襟だけを特化して考えれば伊達襟も裏地がつかない単衣でなければならないわけとなります。

 しかしながら単衣に見せるため裏地もついていない伊達襟をつけるのはどうも心許ない気もしますし着物から浮いてしまいそうで自分で着るには難しい気もします。
 理屈から言えばこのようになるのですが付け比翼になっていなくて襟だけの布では何とも本体の着物との収まりが悪い気もしますし着にくいことでしょう。

 最近はほとんど誂える方がいなくなってしまいましたが、以前には結婚式のお仲人を単衣の季節である6月や9月に頼まれると単衣の黒留袖を注文で創った事もありました。
 その時は付け比翼も当然単衣仕立で創りました。それを考えると付け比翼は本体の着物にしっかり付いているので着にくくはないですがはたして伊達襟だけだと一枚の布ですから伊達襟に裏地がないのはやはり綺麗に重ねるのは難しいでしょう。
 結論を申しますと、単衣の着物には伊達襟をつけることは考えずに着る事にしておくのが無難でしょう。
 それでも華やかさが欲しいなら半襟に凝って品良く格調高い半襟、たとえば刺繍や箔が施してある物の半襟を遣われるのも一考でしょう。ただし襟は白地で上質の物が相応しいです。
 単衣の時季は秋は短いですがそれでも昔よりは単衣を着る期間が最近は長くなったようです。9月に入ってからの伊達襟に付いての疑問をお持ちの方がいらしたら参考にして下さい。

2016年7月31日日曜日

七月の狂想曲も終わり。


 梅雨も明けて夏の青空は気持ちいい。風も吹き,空には夏雲も現れて夏も今が最盛期だと思わずにはいられない。
加えて今日は都知事を選ぶ投票日で私も朝早くに近くの投票場へ向かいました。それほど人もいなくてさっさと投票は済ませられました。

 かつて子供が通っていた小学校は変わっていませんが何年後かには近くの小学校と統合される運命とか、子供がどんどんと少なくなっていることは残念です。
 
 このひとつきの選挙合戦の賑やかだったこと、明日からは新生都庁となるのでしょうか。
そして工房では五月のゴールデンウイークが明けた頃より浴衣の会を昨年に続き企画しましたが、盛況の内に七月末まで何かと忙しく浴衣に関わる日々でした。

 花火大会もたけなわであちらこちらで始まり浴衣姿で出かける人たちが今年は特に多く見受けられます。
 
特に今年は大人の男性たちの浴衣が増えて来たのはとてもうれしいことです。

 東京オリンピックが開かれるのは7月だそうですからその頃までにはもっともっと東京にも浴衣姿を楽しむ男女が増えてくれれば日本の夏らしくなると思われ楽しみです。
明日からいよいよ八月あとひと月しかない日本の夏を大いに満喫しましょう。

選挙も終わり夕立もあり、今宵は街も静かに納まった感じがします。

2016年6月17日金曜日

夏の会に寄せて



 18日からいよいよ「夏のあらた会」が始まります。そして「今昔の会」も同時開催します。
今年は例年より遅くなりましたが、この不安定な梅雨の時季にもかかわらず夏の着物や小物に関しての問い合わせが続くので、お答えする内容も単衣から盛夏、晩夏にかけて微妙に変化するこれからの季節、どのように着物や帯と向かい合い楽しんで行けるか。
着物好きな方々にとってもオールシーズン中最も着る甲斐があるのが夏のシーズン到来です。
お洒落を堪能し、おのおののコーデを考える嬉しい悩みの季節でもあります。

ここへきて絹の持つ特徴やすばらしさを再認識したり夏らしい素材を見るチャンスにもつながります。
素材も数多くありますが,何よりも図柄の占める要素が大きいのが夏の着物や帯たちの魅力です。

毎年春が終わる頃には素材を集めることはもとより、いかに日本の夏を思わせる柄があるかと私は頭を巡らして考えます。

かつて昭和30年代前半でしたか高山植物ブームが有りました...
戦後、世の中が落ち着き、若い人々が登山やワンダーフォーゲルを多いに楽しみ青春を謳歌した時代です。

 若者は山に憧れ登山やハイキング、スキーにも今よりももっと大勢が楽しみました。
 街には歌声喫茶なども盛んな時代で、私も高校生ぐらいには歌声喫茶なる場所に連れて行かれた経験があります。山や自然の景色の歌が大いに歌われました。
 登山に熱心だった人々が山でしかお目にかかれない草花を愛でるようになる頃には、高山植物の希少性と清々しい美しさが紹介されて,その頃先代は多くの花々の図案を作り主に帯に染め上げました。夏の山々はお花畑のようですし固有種の花が咲き誇ります。花の種類は数多くあります。
 私も若い頃は高山植物の染め帯を数々染めましたが平成の今、復刻としてまた作ろうかと意欲に燃えています。

 かつてのような登山ブームには、もうならないかもしれませんが私も今より若い頃に山の花に憧れて、がんばって登山し見た花はあまりにも高貴すぎて、まだ作品には取り上げていませんが追々イメージを凝縮させて、いつか帯にその姿を映したいと願っています。

先代の描いた図案は紙が古くなり、長い年月の内に茶色くなっていますが半世紀も経っているので無理もありません。
 私に取ってだけ価値があるのかもしれませんが再度、かつての登山ブームで山男たちがみた花をまた描きたく思います。
 最近では山ガールと言うそうですが、、、この夏も山の花にまた会いに行きたいと思います。


2016年3月29日火曜日

花桃、桜、弥生の空は


この間まで寒かったのに弥生の月も終わる頃となり春爛漫の景色が巡って来ました。
工房隣の公園では桜は満開で空の色も見えないほどに対角線上に植えられた桜が互いの枝を伸ばして重なり合って、小さな公園は仰ぎ見れば桜でいっぱいです。



 時を同じくして我が工房も塀に垂れる花桃が紅白の花をまるで舞台の作り物のように見せて、道行く人を楽しませている様です。
 工房の自慢の源平垂れ桃です。そしてガレージの隅の空き地では草の王が黄色い花をあちこちで咲かせはじめました。

 そして落下する椿で一面に紅く小さな庭は覆われます。
 塀に面しているところでは落ちる椿は上を向いたり下向きになったりとしますが落ちた瞬間から半日くらいの間は、すぐにかたづける気にはなれません。

とうていゴミとも思えなくて花びらが茶色くなってから掃除します。
作為なく落ちている花の構図ははそれなりに絵にもなります。殺風景なアスファルト上でも美しく見えます。

 東京に桜が咲きはじめれば、いよいよこの地を皮切りに私の桜行脚もスタートです。
ソメイヨシノもカワズザクラも山桜も富士桜も垂れ桜も八重桜もみんなみんなどれもそれぞれの趣があり、また1本桜も桜並木も風情がありますし、桜を巡る楽しみはゴールデンウイークまで北へ北へと向かえば長く楽しめます。

 今年も桜を愛でることが出来たと思うのは元気で生きていることを謳歌する証でもあります。華やかさと儚さ、哀しさをも時には感じさせるのが桜なのでしょう。

 私も着物を創る中で、どれほど桜を題材に作ったかは帯も含めてみれば数えきれませんが毎年、毎年桜の表情が違ったように見えるのでこの先もまだまだきりがなく表現出来る気もして飽きないのが不思議です。それはきっと毎年桜を見る自分自身が変化しているのかとも思うのです。
 桜の木も寿命があるそうです。戦後焼け野原だった東京に植えた桜が今が一番よい時期を迎えて大きく逞しくなり東京の中でも名所があちらこちらにあります。私の小さかった頃は今ほど桜は立派ではなかった気がします。
 私も桜の木と一緒にこの東京で育ち大人になり今が最も良い時期を迎えているのかと考えたりします。
桜をいっしょに眺める人は毎年違います。もちろん毎年一緒に眺める人もいますが、もう2度といっしょに眺められなくなった人もいるのです。桜を観る度に色々な想いが交錯します。でも今のところは今年も桜も花桃も同時に眺められて幸せに思っています。



2016年2月1日月曜日

瑠璃の会の新年会はオペラ・ガラ・コンサートで。

 
 今年初めての着物で遊ぶ「瑠璃の会」は1月31日、目白のメイヤー・ライニンガー礼拝堂で開催されました。連日のはっきりしないお天気の中、雪の不安を抱えながらも、当日は晴天に恵まれて無事に開催の運びとなりました。

 着物姿が80人あまり集まり花が咲いたように華やかで青空の下、三々五々と目白に集まり無事に「瑠璃の会」が開かれました。



今回は念願のオペラ・ガラ・コンサートでハイライトシーンのアリアを1部、2部構成でお食事を挟んでたっぷりと堪能して頂きました。

 素敵な音楽とお食事そしてお洒落な気分は、どんな特効薬よりも良く免疫力アップの効果絶大でそれはそれは楽しい会となりました。このたびは30周年記念で感慨深い想いがありました。

 出演者のエネルギー溢れる歌の熱気と、明るい日差しが窓から注ぎ、歌にも私たちにも冬の午後の光いっぱいに溢れていました。
 あるお客様が「瑠璃色の空になりましたね」と言われました。瑠璃は色々な光を帯びて、さまざまに輝きます。一人一人が個性を放ち、お互いに着物をより深く楽しめるようにという願いが込められています。
  1個人の私の想いから始まった着物の会がこんなに長くも続けられたのは,着物好きな皆様のおかげと感謝するばかりです。皆様に着物を着て出かけられるチャンスを作りたくて昭和60年からはじめたのですが、もう30年も過ぎたのかと私自身が驚いています。

 今まで着物を取り巻く業界や売り方、着手である方たちの考え方や女性の生き方も含めて景気の良いときも悪い時もあったりした中、私自身着物に携わる仕事を続けてこられたことに、支えて下さった人たちが沢山いたことに今は感謝感謝の気持ちでいっぱいでした。

着物は着てこそ素晴らしい。飾っておく物ではなく着る人により命が吹き込まれ動くことにより素晴らしい衣装となることを今回も実感させて頂きました。
 そして何よりも「瑠璃の会」を通して様々な交流がなされていることに人と人をつなぐ広がりが感じられるのも私の楽しみのひとつであります。
 いつまで続けられるか分かりませんが「瑠璃の会」を開催出来ることも私の元気の源と考えてこれからも進んで行きたいと思います。

 この1月の瑠璃の会を終えてから、新しい新年がまた始まっていくと自分に言い聞かせてこの春の作品作りにも励もうと考えています。2月は私の誕生月なので余計そう思うのかもしれません。
 ましてや今年は閏年です。2月29日生まれの私はまだ10代の終わりの年齢だと思う事にしています。少なくても精神年齢はそんなものでしょう。まだまだ制作したい着物や帯がいっぱいありますから。