2014年7月11日金曜日

次世代に繋げる着物の文化について



 私が着物に携わって50年も経とうとしています。その間余りにも色々なことがあり今は分厚い本のページをめくるように様々な思い出が脳裏を駆け巡ります。

今年の秋から、高島屋さんのカルチャーで着物の講座をという依頼を頂き、その受講生募集の為のパンフレット作りの取材が工房でありました。
 お若いコピーライターの方から沢山の質問が出ましたが、答えて行くうちに着物の世界を取り巻く業界、そして消費者もこの50年で大きく変わってきたと思うのでした。50年前には東京オリンピック開催のため国を挙げての熱気に東京中が包まれていました。
 
 そしてまだまだこの時代には多くの女性が普通に着物を着ていましたので、何かあればすぐ着物を着るという習慣も充分にありました。着物を散り扱う業者にとってもまだまだ商売がしやすい時代でした。

 家族の形態が核家族となり、住居も畳を持たない部屋があったりするぐらいから生活を取り巻く環境が大きく変わって来たので、着物を伝えて行く文化が昭和40年を過ぎた当たりから徐々に伝わりにくくなりました。

 本来は代々女性が伝えて行くべき着物も、どこかで段々と伝わりにくくなって行きました。
 着物を着る方達もずっと減って行き、祝儀、不祝儀やお式が伴う慶事の時しか着なくなり日常的に着る方も少なくなって若い方々がお茶やお花のお稽古に行く事もずっと減って来たのに連れて、何よりも女性の社会進出がめざましくなって女性の着物に対する意識も大きく変わりました。
 私が感じますのに、売り手である過去の男性たちが考えている着物と、着る側の女性たちの着物に対する認識が大きくずれてきてしまってそのまま今に至っているような気がしてなりません。
 女性達はどんな着物を着たいのかという欲求に対して旧態以前の様な売り方が通用しなくなってきているのです。
 つまり女性はワンパターンのままで老いてゆくの ではなく、様々な形で現代を生きているんだという認識が、着物を作り販売する人たちに不足しているのです。
 難しい時代ですが、過去に沢山の着物を持っている人たち、それらの着物を次世代にどうやって繋げて行くかと言う事が大きな問題になっているのです。

 着物の着方ばかりでなく、活用の仕方も含めて廃れないように日本女性の誇りとしての着物文化に取り組むことが、今の、これからの私に与えられた大きな課題であると思う日々であります。
 この度は、これらのことを着物にまだ興味を持っていられる方たちにお話出来る講座の内容にして行く良い機会と思っております。

富岡の製糸工場も世界遺産となった今こそ、素晴らしい絹の文化を伝えて、かつての絹の国、シルクロードのたどり着いた我が国のすばらしさをどうしたら伝えて行けるか。
 着物を愛して着続けて行く人たち、と一方では全く着物の事は考えてもいない人たちと二極化した現代の日本女性に問いかけて行く事が使命だとも考え伝え方を模索している日々です。