2013年6月30日日曜日

懐かしの「中原淳一展」に行く



 梅雨の晴れ間を縫って横浜のそごう美術館に「中原淳一展」を見に出掛けました。中原淳一「それいゆ」と聞くと、とたんに自分の中学生時代を思い出します。
 「それいゆ」というあの本が私の中学時代にはバイブルの様な存在でした。一寸変わった大きさの本で、毎月この本が届くのが楽しみでした。学校へ持って行き、友達と本の隅々まで読んだりして胸がわくわくするようなお洒落な情報を得て単調な生活の中で最も刺激的な話が満載で、素敵な服のスタイル画に憧れました。



 私の世代の方は皆さん読まれていたことと思います。彼のデザインの服はどれも素敵で少女の心を華やかにしてくれました。
 制服しか着なかった毎日の中でたまのお出かけは私服でお洒落をしたいと思っても少女の夢に合いそうな服は当時ありませんでしたから、両親にデパートで買ってもらったスカートは今でも記憶の中にあります。
 彼のデザインのスカートは絵から抜け出てきたようで大のお気に入りでした。 きれいな空色の厚手で上質な木綿だったのか、形は大きく広がる全円のスカートで所々にレースの白い花の形のアップリケが施されていて、くるくる回るとサーキュラースカートは大きく円形に広がりそれは嬉しかったのを思い出します。



 白い提灯袖のブラウスを着て、白の籐のバッグを持ち白い靴でその頃ロードショウで「ウエストサイド物語」を観に連れて行ってもらったのです。
 映画も衝撃的でしたが精一杯お洒落をして出掛けた浮き浮き感と空色のスカートが忘れられません。少女の私の第一装でした。あのスカートはその後どうなったのでしょうか、青い空に飛んで行ってしまったのか妹にあげた記憶もありませんから、ただただ懐かしく想い出すだけです。
 中原淳一のデザイン画から抜け出たあのスカートが私の中学時代の唯一華やかな思い出でした。 そんな数々のスタイル画を今回の展覧会で多く目にし、少女の独特の表情をした挿絵の数々、本の表紙は見応えがありました。



彼の描く少女は一様にあごがとがった様な三角型の顔の輪郭に大きな目がパッチリとしています。今みると少女漫画の原点のような顔にも見えます。
 当時デビューしたてだった女優の浅丘ルリ子さんにも唇が似ています。そして人気があったオードリー・ヘップバーンにも似ている気がします。芦川いずみさんも「それいゆ」に登場していました。
 女優さんは憧れの遠い世界に住む人たちですから、私たち読者は「それいゆ」にお洒落の提案で書かれていた記事の中でエプロンのいろいろとか、少女の部屋のインテリアや、ヘアースタイルの挿絵など日常的な事に興味を惹かれました。
 昭和30年台に少女だった私たちに影響を与え夢を持たせてくれた雑誌で、まるまる私の中学時代でした。
 その後は高校生になると外国からの雑誌に影響を受けて行くのですが、今思うと幼さが残る少女の時代が懐かしいです。

 展覧会では数々の表紙を飾った絵を一同に見る事が出来て、私と同じ世代の方々が訪れて熱心に見ていました。 展覧会を見終わると元町に出て馴染みのお店でランチを取りましたが梅雨の晴れ間のちょっとした小旅行のような6月を終わらせるノスタルジックな一日でした。
 まもなく盛夏に入ります。梅雨明けはまだまだ先の事なのでしょう。紫陽花もそろそろ盛りを過ぎて、今はハイビスカスの鉢を楽しんでいます。

2013年6月20日木曜日

今昔の会に想う



 あらた工房では今、夏の着物新作展「夏のあらた会」+古い着物の相談会「今昔の会」を開催していますが、残すところ3日ほどとなりました。
  毎年6月恒例の「今昔の会」は、多くの職人さんたちの力を借りて古い着物の再生を手がけています。
 昨日はどさっとお客様から昔の着物が届きました。ご自身のお母様のお若い時の着物ばかりです。さて、これらをどのように現在のお客様の着物に再生するか、これから相談が始まります。


 どの着物にも思い出が詰まっています。縁のある方がまた引き継いで行くことが最も望ましいことと私は思っています。
 やむなく他人の手に渡ることもあるでしょうが、着物1枚1枚の事を思えば処分されたりされるよりは、ゆかりのない方に渡っても役に立てれば着物自身は嬉しいかも知れません。古い着物が捨てられることのないようにといつも考えています。

 今から手をかけて昔の着物を再生すれば、冬にはまた新しい着物になっていくつかはお客様の手元に戻る事でしょう。私自身も楽しみなことです。

 私にとってもこの6月の「今昔の会」は、着物について色々と考えさせられる特別な月です。そして次の作品への意欲をも養える大事な季節です。
 梅雨空で外出も少なくじっくりと昔の着物と向き合える気がします。これは私の思い込みかも知れませんが1枚ずつ着物をながめていると着物が私に色々と語りかけてくる気がしてくるのです。

 「今昔の会」の仕事は地味なのですが着物に恩返しと思っております。昔の着物と対話できるのは私だけの特権かなと自負しています。

 先日友人が届けてくれた紫陽花の切り花も毎日水切りをして保っていましたがついに終わってしまいましたので今度は黄色いハイビスカスの鉢を置いて見たら一気に夏らしい気分になりました。さぁ、もうひと頑張りしましょう。

2013年6月10日月曜日

木曽の漆器祭り



 梅雨時と言いながらも晴天に恵まれて木曽平沢の漆器祭りに行きました。緑の濃い山間を抜けて行くと谷あいにひしめくように家々が並んでいます。


 平沢地区には9時に着き少ない駐車場を確保してから村落の両側に立ち並ぶお店を眺めながら何か気になる漆器はないかなと左右を見ての往復は楽しいものです。 それぞれの家の職人さんたちが熱心に漆器を並べて説明してくれます。
 どの家も家族中で暖かく、一生懸命迎えてくれます。ウド汁を振る舞われたり素朴な蕗やイタドリの山菜を勧めてくれます。山間を流れる清流が時々涼しい風を運びます。 



もう何年もこの木曽の漆器祭りには通い続けていて器はもう使い切れないほどあるので最近は大きな物やインテリアの品に目が行きます。いつもひらめいて手に入れます。
 今年はランプシェードというのか木に紅い漆を塗ったシャープな形に惹かれて求めました。



 夕方には山のアトリエに戻り友人たちと早々と夕食作りをして山菜の天ぷらや持って行った鱧を天ぷらにして話が弾みました。
 山ではレンゲツツジも終わり十二単も終わりかけて、白いマーガレットやミヤマアカツメグサそして卯木の花が咲いています。中でも斑入りの葉を持つ薄紅色の谷卯木が何とも爽やかで浅緑色の葉が美しいです。
 野薊もぐんと葉が出て来てその新芽を摘んでこの時期恒例の天ぷらの食材になりました。カッコウにウグイス、時折啼く雉の声が響き渡る山の初夏です。まだ紫陽花も花芽が見えず待ち遠しいですがベルガモットが大分増えて来ているので7月が楽しみです。

 今年の梅雨は空梅雨なのでしょうか。それも困りますが雨は寝ている間に一生懸命降ってくれれば良いのにと都合の良い事を考えてしまいます。空梅雨では作物も実らず貯水池も干上がってしまうから心配です。
 葡萄や桃は甘くなってくれるでしょうか、はや6月も三分の一過ぎてしまいました。

 今週からは、夏の新作展「夏のあらた会」と、古い着物相談会「今昔の会」がはじまります。梅雨の晴れ間にお客様がいらして下さると嬉しく思います。