2016年9月5日月曜日

単衣の時の伊達襟について



 猛暑の夏が過ぎ、9月になればさすがに朝夕は吹く風も秋らしく感じます。
9月に入ったとたんに,さて何を着よう。夏を引きずるのは良くないし、9月らしく装うのはどんな着物がいいだろうかと、お出かけが決まっている方は少し悩むこともあります。
 早速に質問が飛んできました。9月の結婚式に相応しい単衣の訪問着があるのだけれど、伊達襟をつけるのはどうなのかしらという悩みです。
 元々伊達襟というのは、本来重ねで着る着物を省略して伊達に襟だけを残した物が一人歩きしたのですから、それを考えればこの季節に上が単衣の着物であれば下の比翼も単衣であるべきなのです。それで襟だけを特化して考えれば伊達襟も裏地がつかない単衣でなければならないわけとなります。

 しかしながら単衣に見せるため裏地もついていない伊達襟をつけるのはどうも心許ない気もしますし着物から浮いてしまいそうで自分で着るには難しい気もします。
 理屈から言えばこのようになるのですが付け比翼になっていなくて襟だけの布では何とも本体の着物との収まりが悪い気もしますし着にくいことでしょう。

 最近はほとんど誂える方がいなくなってしまいましたが、以前には結婚式のお仲人を単衣の季節である6月や9月に頼まれると単衣の黒留袖を注文で創った事もありました。
 その時は付け比翼も当然単衣仕立で創りました。それを考えると付け比翼は本体の着物にしっかり付いているので着にくくはないですがはたして伊達襟だけだと一枚の布ですから伊達襟に裏地がないのはやはり綺麗に重ねるのは難しいでしょう。
 結論を申しますと、単衣の着物には伊達襟をつけることは考えずに着る事にしておくのが無難でしょう。
 それでも華やかさが欲しいなら半襟に凝って品良く格調高い半襟、たとえば刺繍や箔が施してある物の半襟を遣われるのも一考でしょう。ただし襟は白地で上質の物が相応しいです。
 単衣の時季は秋は短いですがそれでも昔よりは単衣を着る期間が最近は長くなったようです。9月に入ってからの伊達襟に付いての疑問をお持ちの方がいらしたら参考にして下さい。