2011年12月11日日曜日

クリスマスに装う


 もう12月は三分の一終わってしまいクリスマスを待つまでになりました。この時期は例年は出かける事も多くていつも何を着ようかしらと考えます。最後の紅葉も都心では銀杏並木でしょうか。銀杏の帯も出番がないと可哀相なので1回は締めます。それから忘年会や12月の観劇もありは特に年末にはコンサートも多くあるしクリスマスの頃には食事会も増えます。

 しかし秋も終わり冬には確実に入っているので秋の模様も引きずりたくないし、そうかと言って新春らしい装いも出来ません。
冬の楽しみは何だろうと思い冬らしい遊びや、この時期には冴え渡る冬の夜空に思いを馳せて星々や天体の美しさ、降りしきる雪模様、クリスマスの心躍るプレゼント、子供の頃に雪が降るとやたらに嬉しかった思い出、雪合戦や雪だるまを作って夢中に遊んだ頃の気持ちに回帰したくなります。
 大人たちは雪が降ると後が嫌だとぶつぶつ言うのを不思議に感じて、お盆の上に雪兎を作ってみたりしてはしゃいでいた頃を、あの時の気持ちを再現して童心に戻りたいと私は冬の作品にこだわります。
 着物の業界では秋物が終わるといきなり新春モードの制作に取りかかるのが常でした。追っかけてすぐに春物です。寒くて冷たい冬のムードなんかには余り目もくれません。
 私はその狭間にある冬の景色をモチーフにした作品に力を注ぐのが好きです。
西欧的な楽しいロマンチックな題材もありますが、最も日本的な雪の朝を歌った切なくも悩ましい大人の歌である北原白秋が詠んだ以下の1首が大好きです。
五感に訴える素晴らしい相聞歌で雪が降ると私は今でも小さくつぶやいてみます。
これだけは子供の頃には知らなかった世界です。林檎柄の着物を創ったのはこんなイメージが心にあるからです。今月のトップページにアップしてあります。

 「君かえす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」 北原白秋

 そう、不倫の歌です。この後、姦通罪で白秋は訴えられますがこの時代のことを思うと隔世の感があります。今が良い時代なのか悪い時代なのかよく分からなくなります。林檎柄の着物を創る人なんて私くらいでしょうか。