2011年3月7日月曜日

吊し雛


 春の新作展の「あらた会」が始まりました。なかなか暖かくならない三月ですが、桃の節句も過ぎてしまいました。今年は初節句の子がいましたから、例年になく賑やかなひな祭りでした。四日には早々におひな様は片付けられてしまい驚きましたが、いつまでも飾っているとお嫁に行けないなどと言われていることを、人の子の親になればやはり気にするのかと、少々その片付けの手際の良さにおかしくもありました。
私の妹が、長年にわたり作り続けている吊し雛が、沢山我が家にも届けられ、こちらはまだ少しの間、せめて桜が咲くまでは吊しておこうかと思っています。吊し雛は一つ一つ見ると、なかなか工夫されていて、いかにも女の手仕事で、気持ちが込められたものになっています。手持ちの布から色々に想像を膨らませて形にする作業は、きっと癒しの効果もあるのだろうと思わせます。私には到底出来ない手作業ですから、見ているだけでも面白いものです。春の陽を浴びてゆらゆらと揺れている様もまた春らしい風情です。

 定番のような桃と菜の花の組み合わせの生け花もこの時期ならではの生け方で、どうしてもこれがないと弥生三月の感じがせず、今年は桃の枝と雪柳の枝だけにしようかと思い花屋さんの店先で悩んでいる内に「菜の花も入れてください」と言ってしまったのです。
何十年も繰り返してきた桃の節句のお約束の生け花の刷り込みからは、やはり逃れる事が出来ませんでした。

 春の展示会は桜の千変万化を中心にして桜開花を待つ気持ちで創られた作品を展開しています。 
毎年桜をテーマに考える繰り返しですが、不思議なことにその年により違う角度から捉えることが出来るのです。まだまだ蕾も見えませんが、この時期になると思わずあの黒い幹に触ってみるのです。ぐんぐんと大地から水分を吸い上げてたっぷりと養分を溜めているかのように見えるからです。
 
 今年は3月27日頃の開花と聞いて心待ちにしていますが、今はお客様が多くて桜餅を毎日のように買う日々です。他にも草餅やうぐいす餅など、春の和菓子は楽しく浮き浮きとした気分にしてくれます。桜色の小物がとても目に付く月でもあります。