2013年4月12日金曜日

諸葛菜と草の王



 すっかり葉桜になり緑が芽吹き、葉や草の勢いが感じられる気候です。
はこべも庭の片隅で元気にやわやわとした葉を盛んに伸ばしています。はこべを見ると少女のころ家で飼っていた鶏の餌にはこべを摘んできては刻んで他の餌と混ぜてやる役目だった自分の事を思い出すのです。いかにも柔らかくて、食料の無い戦時中はこんな草も食べていたのではと思います。

 雑草と一口にいってしまいそうな草は確かに逞しく突然に降って湧いたようにある日沢山に増えてその花が咲くときにやっとその存在に気づかされるのです。我が家の小さなスペースの庭と呼ぶほどでもないのですが大きな2本の椎の老木の下には様々な雑草がはびこります。今年の春に目立つのは紫大根と呼ばれる諸葛菜と草の王の黄色い花で同時に椎の根元で競演していることです。
 絶対に花屋さんでは売っていない花々を居ながらにして眺められ楽しめるのは案外贅沢ことかも知れません。


紫大根の花は素敵な名前である諸葛菜という別名を持ちます。その昔三国志に出て来る諸葛孔明が荒れた戦地にこの花の種を蒔いていったといういわれがありますが元々中国から渡って来た植物なのでしょうか。薄紫の柔らかい花は明るい緑の葉に映えて春らしい景色となります。


 そして黄色い4弁の花びらを持つ草の王はこれまた立派な名で何故かと思えば薬草として実際に使われたそうで尾崎紅葉が癌の治療薬として用いたと言われているそうです。毒を消す効能があるとのことですがそれで草の王というのでしょうか。

 都会の真ん中で見られる雑草の類に入るようなこの花々は今となっては貴重なのかもと思うのですが、では一体どこから運ばれて来たのでしょうか、不思議です。椎の木に囀る野鳥が落としていったのかもしれないと今日も高い梢で盛んに囀る鳥たちの姿を目で追って見るのです。緑の葉はエイプリルシャワーを浴びる度にぐんぐんと成長をしてやがて初夏の兆しを感じさせることでしょう。


 紅い新芽の枝垂れ楓も日に日に葉が開き大きく広がり塀の外まで下がりはじめこの楓も今の季節の中では楽しみな景色です。沢山種類がある楓の中でも「手向け山」と呼ばれているようでこちらも素敵な名前でお気に入りの木となっています。小さな庭の四月の移ろいを楽しんでいる日々が続いています。