2013年2月2日土曜日

黒い椿


 とうとう2月に入ってしまいました。今日辺りは少し暖かく梅の頼りもちらほらと聞こえて来ます。 梅も香りが良いですが昨日から水屋の棚に飾った水仙が良く香っています。水仙は独特の気高い感じの匂いです。

 千葉の鋸南市では水仙が多く海沿いに植えられていて今は愛でるのにとても良い頃だと放映されていました。抱えきれないほどの水仙を胸一杯に摘んでみたいなという衝動に駆られました。 花々の香りは春の到来を伝えます。梅、水仙がまず先頭でしょうか。可愛いパンジーやチューリップにも目が行くのですが洋花はもう少し後にしましょう。 まず日本の花、木に咲く花、山茶花、椿、ぼけの花、梅からと楽しんで行きましょうか。 早春の空に大きな柑橘類の木である柚や橙などが成っているのも大好きな景色です。

 近くのマンションの庭には絞り模様の椿があります。近々取り壊されるそうで、あの木はどうなるのだろうと今から心配です。紅白の絞りの椿はひとつづつ皆違う染め分けで見ていても楽しいです。切り倒されてはもったいないと思っています。
  椿はたったの一輪でも絵になり風情が出ますし、どんな花瓶でも良く合う不思議な存在感を持った花です。ワビスケのようにお茶花にも使われますが昨年は白いのではなく暗い濃い赤のクロワビスケの枝を頂きました。
  もう植える場所もありませんが鉢植えでも良いので今年は植木市で探してみようと思います。 これから花を追いかける季節になりましたので楽しみです。 玄関脇に可愛い名前のカンザシソウをいくつも植え込みました。 蕾は紅く咲くと白い花です。もうさすがに凍ることはないでしょう。 梅園の見頃や梅祭りはいつか探しております。


過日、1月28日には板東三津五郎さんの新年会に出掛けました。その折に仕立て下ろしの訪問着を着ました。この着物はかなり大昔のものできっと戦前に染められた着物と思われます。
 訳あって私の手元に長いことありましたが思い切っての陽の目を見せようと自分の着物寸法に仕立て直しておきました。
 それからまた10年ほどが経ってしまったのですが、ふと思い出して今年の新年会に着て見ました。とても不思議な柄で上前から脇ににかけて椿の頭が三つさっとした筆致で描かれていてそれが黒、紫、錆朱とあり得ない様な椿の色なのです。
 モダンというか粋というか現代にはない色合いです。 地色はとても渋い白茶色で私はあまり着た事がない地色です。 帯が難しいなと思いましたが手持ちの黒地塩瀬の雲龍柳を描いた帯を合わせて見ましたら案外合いました。
 黒い椿は丁度上前寄りの脇に描かれています。これは黒ワビスケなのかしらとふと思いました。昔の職人さんの制作意図を聞いて見たかったとあれこれ想像します。
 粋でモダン、お江戸の匂いもする着物です。歌舞伎関係の集いには相応しいかと着てみました。